研究アプローチ

参考情報として個人研究の事例を一部紹介します。
研究では、フィールドワーク、資料分析、アンケート、統計解析・データマイニング、GISなどを組み合わせています。
ビッグデータ解析では、RやPythonによるプログラミングが主な手段になります。

人流ビッグデータによる観光動態や集客圏の分析

箱根町にきた訪問者のGPSログや箱根町への観光流動を可視化したもの
Point:先端科学ツールとビッグデータ解析による新たな知識発見と価値創造

GPS(Global Positioning System)ログ、位置情報付きSNSデータ、ダイアリーデータなど、観光行動を表す人流ビッグデータの応用研究を積極的に進めています。地理情報システム(GIS: Geographic Information System)による視覚化技術や、データサイエンスのアプローチを組み合わせることで、多様な分析が可能となり、新たな知識発見や価値創造につながると考えています。新しい解析手法の検討、現象分析への活用、地域計画・マネジメント業務への導入について、研究しています。これまで、特定の観光地から日本全国にいたるまで、狭域から広域のスケールにおける研究蓄積があります。最近では、観光地誘致圏の探索的分析のためのフレームワークやアルゴリズムの開発を研究しています。

参考:
Sugimoto et al.(2019)Visitor mobility and spatial structure in a local urban tourism destination: GPS tracking and network analysis, Sustainability, 11(3) 919.
・杉本(2023)人流データを活用した観光地誘致圏の時空間的変化の分析ー箱根町を事例としてー. 第16回地理空間学会大会(2023年7月1日)

観光・余暇に関わる産業集積の空間分析や地域潜在力の評価

東京23区周辺でのライブエンタテイメントのイベント分布を昼間(上)と夜間(下)に分けて可視化したもの
Point:ミクロな時空間データを活用した新たな地域観光統計指標の開発

地理空間情報技術の進展や社会への浸透により、地域に関するあらゆるデータが入手可能になりました。その中には、集客施設や飲食店などの建物の位置を示すミクロな空間データの集合も含まれます。こうしたマイクロジオデータを使い、新たな地域観光統計指標の開発に取り組んでいます。それと同時に、産業集積や地域潜在力の測定への活用可能性について検討しています。最近は、時空間分析により、飲食業・娯楽業からみた地域の夜間経済特性を把握することへの応用研究を進めています。

参考:
杉本ほか(2020)飲食店の集積と営業時間からみた商業地特性の分析:夜間の新宿、銀座、渋谷の比較, 地理空間,12(3),227-245.
・杉本(2023)イベントの時空間分布からみたライブエンタテイメントの全国的動向:音楽・ステージ系イベントの地域的特性と夜間経済との関係, 観光研究, in press.

観光現象の地域的展開や都市・地域の観光発展プロセスの理解

GISで作成した上野地域の空間構造を示す地図
Point:フィールドワークによる国内外での地域調査、観光が地域へもたらすインパクトの深い理解

日本や外国の都市・地域を対象に、フィールドワークによる地域調査や文献資料などの分析を行い、観光現象の地域的展開や地域の観光発展プロセスを解明する研究を行っています。時と共に観光や地域は変化していきます。過去から現在までの地域戦略の歴史などを読み解き、観光による地域発展のプロセスを明らかにし、今後の地域戦略への活用を志向するとともに、観光によるインパクトの評価につなげていくことを目指しています。様々なデータをパズルのように組み合わせる思考作業は大変ではありますが、楽しさも感じられます。今まで、東京、シンガポール、ベルギーといった地域で調査を行ってきました。

参考:
杉本ほか(2016-2020)都市観光地における観光地マネジメントの課題解決と再構築に向けた地域・観光動態研究. 東京大学空間情報科学研究センター CSIS共同研究
・杉本興運(2017)シンガポールにおける観光とMICEの発展, E-journalGEO,12(2) 246-260.