特別講義:『そっくり世界遺産』の公開
オリジナル講義「もっとディープな、そっくり世界遺産」のダイジェスト版資料を公開します。日本テレビ「世界一受けたい授業」にて放送された、「AIが判定:日本のそっくり世界遺産ランキング」の続編という位置付けです。実はこの番組にて、僕がテレビ局のスタジオで解説役の講師を務めさせていただきました(詳細はこちら)。ですのでパクりではないです。
本講義は、2022年から学部1年生や高校生に向けて提供してきた、海外と日本の観光資源を学ぶための模擬講義です。画像AI技術を応用している点がコンテンツとしての個性を際立たせています。具体的には、海外の世界遺産(や有名な絶景)によく似ていると言われる日本の風景を比較し、本当に似ているかどうかを、AI評価とヒト評価を合わせた総合評価にて判定しています。また、各風景の解説や世界遺産の入門知識も織り交ぜ、40〜50分で様々な地理的知識についても学ぶことができます。
講義資料のダイジェスト版
以下が講義資料となります。ダイジェスト版といっても36スライドあります。ライブ講義では各風景の大きな写真と詳しい解説が追加されます。
※当該スライドの無断転載はお控えください。
風景ペアの評価結果一覧
実は上記の講義資料に掲載しているものは分析対象とした風景ペアの一部です。すべての風景ペアの「似ている度」は以下の通りです。35ペア中14ペアを資料の中で紹介しています。

「似ている度」の評価について
画像「似ている度」について、少し詳しく解説します。まず、評価方法の流れは以下の通りです。
- AI評価:3つの画像認識AIモデルにて類似度判定を行い、類似度スコア(0〜1の範囲)を算出
- ヒト評価:東洋大学部生へのWebアンケート調査にて類似度を11段階評価してもらい、平均値を算出後、AI評価のスコア値域と同じ0〜1に変換
- 妥当性検討:AI評価とヒト評価の類似度スコアの範囲や相関を分析し、ヒト評価のスコアと最も近い画像認識AIモデルのスコアをAI評価のスコアとして正式に採用
- 総合評価:2種類の類似度スコアを合わせた総合評価にて最終的に判定(4段階:似ていない、似ているかもしれない、似ている、よく似ている) ※参考:AIとヒトの類似度スコアがどちらも0.5以上だと「似ている」として判定
さて、1)に関連して、AI評価のために簡易AIアプリを制作しました。PythonのPyTorch、Tensorflow、Djangoフレームワークを使用してます。特に外部公開する予定はないため、ローカル環境での利用です。わざわざアプリ化した理由は勉強を兼ねたためです。制作期間は2日くらいです。


3)に関連して、AI評価の正式スコアとして採用したのは「ResNet 152」という画像認識AIモデルのものです。他のAIモデルとして、ResNet 50、Places365という風景画像データでファインチューニングしたResNet 50を試しましたが、これらは類似度スコアが平均的に高すぎて、ヒト評価のスコアとかけ離れていたので、不採用としました。
ちなみに左の図は、自然編の風景ペアについて、AI評価(ResNet152)とヒト評価のスコアをプロットしたグラフです。スコア同士の大きさが似ており、かつ正の相関がみてとれます。文化編の風景ペアは、自然編よりもスコア同士の乖離度が若干高いです。理由としては、自然風景よりも人工風景の方が多様で複雑なためでしょうか?